ポタラ・カレッジ25周年記念

2023年夏の密教伝授

【2024年1月23日最終更新】
お蔭様で、全ての行事は無事に成満しました。ありがとうございます。

緑ターラー(ガンデン寺シャルツェ学堂)

2023年は、チベット仏教普及協会(ポタラ・カレッジ)の設立25周年にあたります。記念の特別行事として、本会会長ゲシェー・ソナム・ギャルツェン師による灌頂を、8月19日(土)と20日(日)の両日に実施しました。今回初めて、リアルタイムのオンラインでも灌頂を受けられるようにし、会場受法との併用方式で開催しました。
法儀の中で観想する内容の説明などは、大阿闍梨自身が日本語で行ないました。チベット密教の灌頂を、通訳なしで受法できるのは、とても貴重な機会だったといえるでしょう。

1.チッタマニ・ターラー尊の加持灌頂

8月19日(土)午後1時~5時
 ターラー尊は、本当の意味としては、諸仏の衆生救済活動を集約して一身に体現した母尊と位置づけられます。それゆえ、ターラー尊へ祈願したり、その真言を念誦することで、速疾に御利益を授かることができるといわれています。さらに、本格的な大乗仏教や密教の修行をを志すならば、ターラー尊の灌頂を受け、その本尊ヨーガを実修することで、道を速やかに進んでゆく力を授かるはずです。
 ターラー尊の様々な行法の中でも、「チッタマニ・ターラー」は、最高水準の密教である無上瑜伽タントラに基づくもので、大変奥深い実践が凝縮された秘法です。チッタマニ・ターラーの加持灌頂は、無上瑜伽タントラの深遠な四灌頂へ一気に入っていく流れとなっており、大阿闍梨の身曼荼羅で瓶灌頂を授けるなど、極めて稀有な特色を有しています。
 チッタマニ・ターラーの法流は、ゲルク派宗祖ツォンカパ大師の直弟子の生まれ代わりとされるタクプ・ロサン・テンペー・ギェルツェンが、本尊に親近して修行を重ねた暁に、ターラーの尊顔を直接拝してお言葉を聴聞したことに始まります。その転生者とされるケルサン・カルキ・ワンポも、本尊の親近行に精進したすえ、ターラー尊から根本の教えを授かったといいます。その内容は、弟子を熟させる灌頂、トルマ供養による親近、内の甚深な身曼荼羅、秘密の胸への流入、及びそれらに関連する灌頂儀軌や、生起次第・究竟次第の儀軌などとされ、いずれもターラー尊御自身のお声によって授けられたゆえに、大変な加持力を伴ったものばかりです。
 このようにチッタマニ・ターラー尊の行法は、後の時代にゲルク派で広まったものであるけれど、その前行・正行・結行の全てにわたり、ツォンカパ大師の教えとよく一致しています。そして、生起次第の身曼荼羅、究竟次第のチャンダリー(内なる火)、降雨の事業の次第などに、甚深かつ速疾な秘法としての特長が揃っているため、チベット全土で多くの修行者たちが実践を重ね精進してきたのです。
 今回の大阿闍梨を務めたゲシェー・ソナム・ギャルツェン師も、長きにわたりチッタマニ・ターラー尊の儀軌や註釈書類を研究し、実地に成就法の修行を重ねてきました。そうした体験を踏まえ、8月に加持灌頂を厳修し、9月には行法の伝授・解説を行ないました。受法者の皆様も、この一連の密教伝授を通じ、単に御縁として灌頂を授かるだけでなく、チッタマニ・ターラー尊の修行を自分自身で正しく実践できるようになったはずです。
 この加持灌頂の受法資格は、顕密共通の道(ラムリムやロジョンなど)をある程度学修していることです(この点は、ポタラ・カレッジで継続的に学んでいる方ならば、まず問題ありません)。加持灌頂受法後の三昧耶誓約事項)は、「チッタマニ・ターラー尊」の短いグルヨーガ(『チッタマニ・ターラー尊成就法』p.99【特別な上師瑜伽】からp.105「四灌頂の摂受と胸への流入など観想する。」までの部分)を毎日1回修行することです。
◎ テキスト『チッタマニ・ターラー尊成就法』(ゲシェー・ソナム・ギャルツェン・ゴンタ、小野裕子 著/ポタラ・カレッジ チベット仏教叢書9)

無上瑜伽タントラのターラー
無上瑜伽タントラのターラー尊(リゾン・リンポチェ猊下より賜わった御影)

2.山居仏母の許可灌頂

8月20日(日)午後1時~4時
 「二十一尊ターラー」の枠組みに包摂される山居葉衣仏母(リトゥー・ロキュンマ)を本尊とする許可灌頂です。
 ターラー尊は、仏陀の全ての力を円満して具えていますが、とりわけ速やかな事業、つまり衆生を素早く救済する働きに特長があります。そうした種々の働きの内容に合わせ、様々なお姿に変化していく在り方が、『二十一尊ターラー礼賛経』などに説かれています。その中で、今回の山居仏母は、主に伝染病から私たちを守ってくださる本尊です。山居仏母を頼って祈れば、難病、霊障、あるいは薬が効かないなど通常では治らない病さえも、真言念誦によって治癒する場合があるといいます。
 新型コロナ感染症が世界的に蔓延した2020年に、ダライ・ラマ法王は、「ターラー尊の真言をできる限り多く誦えるように」とおっしゃいました。なぜかというと、山居仏母が非常に珍しい本尊で世間一般に広く周知されていないため、その本地であるターラー尊の真言念誦をお勧めになったのです。同じ頃、サキャ・コンマ・リンポチェは、山居仏母を信じて真言を誦えるように幾度も強調され、真言の伝授も数多くなさいました。
 仏教では今の時代を「五濁悪世」といい、世の中が堕落して様々な困難に見舞われる時期と位置づけています。今後もコロナのような伝染病が、再び流行するかもしれません。仏教の修行を続けていくために、貴重な有暇具足に恵まれた今生の身心を、健全な状態で守らなければいけません。健康に気をつけて生活するとともに、宗教的な立場からすると、この山居仏母を信仰することが非常に役立つはずです。
 山居仏母の許可灌頂は、2019年に発願して2020年に厳修する予定でしたが、その前にコロナが蔓延してしまって実現に至らず、大変残念に感じておりました。今回遅ればせながら、許可灌頂を行なうことが叶い、とても喜ばしく思います。
 山居仏母の許可灌頂は、まじめな信心があれば、どなたでも受法できるものです。
◎ 参考図書『チッタマニ・ターラー尊成就法』(ゲシェー・ソナム・ギャルツェン・ゴンタ、小野裕子 著/ポタラ・カレッジ チベット仏教叢書9)

山居葉衣仏母
山居葉衣仏母

灌頂の会場

ポタラ・カレッジ東京センター
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町1-5 翔和須田町ビルB1
TEL.03-3251-4090
詳しくは、こちらのページを御覧ください。


9月のチッタマニ行法伝授について

ゲシェー・ソナム・ギャルツェン師による「チッタマニ・ターラー尊」の行法伝授を、9月18日(月・祝)と23日(土・祝)の午後に、ポタラ・カレッジ東京センターで実施しました。教室での受講とともに、リアルタイムのオンライン受講、録音による後日の通信受講も併用できる方式で行ないました。
この行法伝授は、チッタマニ・ターラー尊の加持灌頂を受法した方を対象とするものです(今回の加持灌頂でなくても、以前に受けていれば受講可)。
行法伝授についての詳細は、こちらを御覧ください。


Geshe Sonam Gyaltsen
ゲシェー・ソナム・ギャルツェン師

ゲシェー・ソナム・ギャルツェン・ゴンタ師の略歴

1955年、チベット本土のティンリ村に生まれる。中国のチベット侵攻により、少年期にインドへ亡命。'73年より、ダライ・ラマ法王仮宮殿のお膝下に新設されたダラムサラ仏教論理大学で、チベット仏教の伝統的な学問と修行を積む。'83年に来日。日本仏教を学び、比較研究を行なう。'92年、大正大学大学院文学研究科博士課程(仏教学専攻)満了。ダライ・ラマ法王日本代表部事務所(チベットハウス)文化交流担当となり、'98年まで勤務。現在、チベット仏教普及協会(ポタラ・カレッジ)会長・主任講師。照光精舎宗教文化研究所研究員。'96年、ゲルク派大本山デプン寺ロセルリン学堂にて、「ゲシェー」(仏教哲学博士)の学位を取得する。2011年秋から三年間の大親近行(密教の集中的な瞑想修行)に入り、’14年秋に付加行の護摩を伴い満願。

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