2017年春の密教伝授

【2017年5月16日最終更新】
お陰様で、全ての行事は無事に成満しました。ありがとうございます。

大阿闍梨チャト・リンポチェ猊下

このたびポタラ・カレッジでは、チベット仏教ゲルク派に於ける密教の最高学府ギュトゥー寺の前僧院長チャト・リンポチェ猊下をお招きし、平成29年4月8日から17日にかけて、密教の灌頂などを授けていただきました。チャト・リンポチェは、ダライ・ラマ法王が最も厚く信頼をお寄せになっている、今日のチベツト仏教界を代表する高僧のお一人です。四部タントラによって構成されるチベット密教の教相と事相に深く精通した大阿闍梨として、よく知られています。
今回は、ゲルク派宗祖ツォンカパ大師が「一切タントラの王」と位置づけていらっしゃる「グヒヤサマージャ(秘密集会)」の大灌頂を、聖者流とジュニャーナパーダ流という二つの流儀で厳修しました。これは極めて稀有な機会であり、密教の隅々にまで通暁したチャト・リンポチェ猊下だからこそ実現できた内容といえます。

グヒヤサマージャ(秘密集会)聖者流大灌頂

【ポタラ・カレッジ会員限定】
準備行(タグン)4月8日(土)午後2時~6時
正行(グーシ)4月9日(日)午後2時~8時

秘密集会聖者流阿閦金剛三十二尊

 密教の最奥義たる無上瑜伽タントラの中でも、「一切タントラの王」として名高い「グヒヤサマージャ(秘密集会)」の大灌頂を、聖者ナーガールジュナ(龍樹)の流儀に則して授けていただきました。この「秘密集会聖者流」こそ、ゲルク派宗祖ツォンカパ大師があらゆる仏法の頂点に位置づけている究極の密教です。ツォンカパ大師は、「チャクラサンヴァラ」や「ヤマーンタカ」など他の無上瑜伽タントラの行法も、「秘密集会聖者流」の生起次第・究竟次第と相応させてお説きになっています。それゆえ、ツォンカパ大師の密教教学に基づいて修行する場合、自己に有縁の本尊が何であれ、「秘密集会聖者流」の学修は必要不可欠です。
 なぜ密教を修行するのかといえば、顕教の大乗仏教だけでは、仏陀の色身を成就するのに途方もない期間を要してしまうからです。無上瑜伽タントラの幻身は、仏陀の色身を速やかに成就するための最も優れた手段にほかなりません。「秘密集会聖者流」は、そうした幻身を得るための効果的な道筋を一番明確に提示しており、それゆえツォンカパ大師はこの流儀を最重要視なさっているのです。

文殊菩薩の許可灌頂

4/11(火)午後6-9時 文殊菩薩の許可灌頂は、礼賛偈「カンロマ」の念誦・修習を通じて本尊を成就する流儀で行なわれました。
文字菩薩礼賛偈「カンロマ」については、こちらを御覧ください。

アラパツァナ文殊

金剛手菩薩の許可灌頂

4/12(水)午後6-9時 金剛手菩薩の許可灌頂は、寂静緑金剛手を本尊とする流儀で行なわれました。寂静相の金剛手の許可灌頂は、ポタラ・カレッジでは初めてです。

寂静金剛手

白傘蓋仏母の許可灌頂

4/13(木)午後6-9時 白傘蓋仏母の許可灌頂も、ポタラ・カレッジでは初めてです。

白傘蓋仏母

グヒヤサマージャ(秘密集会)ジュニャーナパーダ流大灌頂

【ポタラ・カレッジ会員限定】
準備行(タグン)4月15日(土)午後2時~6時
正行(グーシ)4月16日(日)午後2時~8時

秘密集会ジュニャーナパーダ流文殊金剛

 「一切タントラの王」として名高い「秘密集会(グヒヤサマージャ)」の大灌頂を、ブッダ・ジュニャーナパーダ(仏智足)の流儀に則して授けていただきました。この「秘密集会ジュニャーナパーダ流」は、チベット仏教を中興なさったアティーシャ大師の頃、インド後期密教の総本山ヴィクラマシーラ寺などで盛んに学修されていた流儀です。ツォンカパ大師も、『真言道次第広論(ガクリム・チェンモ)』などで、ジュニャーナパーダ流の論師たちの学説を数多く引用なさっています。
 しかし、昨今のゲルク派密教に於て、ジュニャーナパーダ流の大灌頂が厳修されるのは、かなり珍しいことです。まして、一連の密教伝授の中で聖者流とジュニャーナパーダ流の大灌頂を両方授けていただけたというのは、極めて得難い貴重な機会といえます。

歯木の投じ方を説明する大阿闍梨チャト・リンポチェ猊下

大阿闍梨の御前で曼荼羅に歯木を投じるゲシェー・ソナム師

上の2枚の写真は、準備行で歯木を投じて悉地を占う場面です。まず大阿闍梨が歯木の投じ方を説明なさってから、ゲシェー・ソナム師をはじめ受者全員が実際に歯木を投じました。悉地は、息災・増益・敬愛・降伏・持明・地下・最勝の七種。

投華得仏

この写真は、正行で投華得仏を行なっている場面です。これも、ゲシェー・ソナム師以下受者全員が、秘密集会曼荼羅へ華を投じました。チベット密教の投華得仏は、実際に華が落下した位置で、五部のうち有縁の部族を決めます。東が大日金剛、南が宝生金剛、西が法金剛、北が不空金剛、中央が阿閦金剛です。

宝冠灌頂

この写真は、正行の瓶灌頂で宝冠をお授けになっているところです。

「秘密集会」根本タントラ、続タントラのルン

4/17(月)午後6-9時 『秘密集会(グヒヤサマージャ)』根本タントラや続タントラのルン(阿含の伝授)を授けていただきました。これは、仏陀から大阿闍梨まで連綿と師資相承されてきたタントラの口伝を、自分の耳で直接聴いて継承するというものです。一般的に『秘密集会』根本タントラのルンは、第十二分までのケースが多いようですが、今回は続タントラと位置づけられる第十八分まで全て授けていただきました。

大阿闍梨チャト・リンポチェ猊下と横綱日馬富士関

根本タントラのルンには、大阿闍梨チャト・リンポチェ猊下のゲストとして、モンゴル出身の横綱日馬富士関も参加されました。モンゴルは、七百年以上の伝統を有するチベット仏教圏で、ソ連崩壊後は仏教の復興が進んでいます。特にチャト・リンポチェは、モンゴルでの教化活動に御尽力なさり、モンゴルの人々から国師のごとく慕われています。


成田空港にて

すべての日程を終え、4月19日の朝、成田空港からデリーへ出発なさる大阿闍梨チャト・リンポチェ猊下御一行をお見送りいたしました。
近い将来に再び来日され、ポタラ・カレッジで貴重な教えの数々を授けてくださるよう、心より祈願を捧げます。

大阿闍梨チャト・リンポチェ猊下の略歴

1954年、チベット本土に生まれる。3才のとき、チャトbya doトゥルクの転生霊童として認定される。インドへ亡命後、ゲルク派大本山セラ寺チェーパ学堂で学修し、ゲシェー・ララムパという仏教哲学の最高学位を取得。さらに、ゲルク派最高格式の密教道場ギュトゥー寺で密教の学修を積む。'97年にナムギェル寺僧院長、2013年にギュトゥー寺副僧院長(ラマ・ウンゼー)となり、2014年に同寺僧院長(ケンポ・リンポチェ)として晋山、2017年に任期満了。四部タントラ全ての教相・事相に精通した大阿闍梨で、ダライ・ラマ法王からの信任も極めて厚い。
2003年7月、'06年5月、'07年9~10月、'12年10月、'14年4月と、これまで5回に渡りポタラ・カレッジ東京センターにて説法を行ない、「金剛界法」の伝授や『真言道次第広論』瑜伽タントラ品の講伝、「ヤマーンタカ 一尊」や「ヤマーンタカ 十三尊」の大灌頂などを授ける。

無上瑜伽タントラ大灌頂の受法資格について

今回の密教伝授に於ける「グヒヤサマージャ(秘密集会)」など、無上瑜伽タントラの大灌頂をポタラ・カレッジで実施する場合、次のような点を中心に受法資格を審査しています。
1.顕密共通の道として、「ラムリム」などをある程度学修していること。
2.大灌頂受法後は、三昧耶(誓約事項)として「六座グルヨーガ」を毎日昼夜に修行すると誓えること。
これらは、本会で勝手に決めていることではなく、様々な教証に基づいて伝統的に守られてきた基準です。
受法希望者は全員、事前に本会会長ゲシェー・ソナム・ギャルツェン師と面談していただき(遠方の方は電話でも可)、上記2点についてお一人づつ状況とお考えを伺ったうえで、受法を承認するようにしています。こうした方針は、以前から行なってきたことであり、今後も同様です。
「将来、無上瑜伽タントラの大灌頂を受けたい」とお考えの方は、日頃から「ラムリム」や「ロジョン」などの教えを学修するように心がけておいてください。

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